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日本企業が東南アジア市場に関心を持ちにくい理由と、その解決策とは。

執筆者の写真: N9N9

日本企業の多くは東南アジア進出に対して慎重な姿勢を取っています。しかし、シンガポールをはじめとする東南アジアの国々は急速に成長し、世界のイノベーションのハブとしての役割を強めています。日本市場の縮小が進む中で、今後の成長戦略を考えるうえで東南アジア市場を無視することはできません。しかし、日本の本社と現地のビジネス環境には大きなギャップがあり、その理解不足が進出の障壁となっています。本記事では、日本企業が東南アジア市場に関心を持ちにくい背景を掘り下げるとともに、このギャップを埋め、日本企業が東南アジアで成功するためのポイントを探り、日本企業が新しい市場へ適応し、グローバル競争で勝ち残るためのヒントを考察したいと思います。


1|日本企業が東南アジア市場に関心を持たない背景

国内市場の優先度が高い

日本企業の多くは、少子高齢化や労働力不足、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった国内課題への対応を最優先としています。海外市場への進出は一部の企業にとって重要ですが、全体的には優先順位が低くなりがちです。また、北米や欧州、中国市場と比較すると、東南アジア市場は規模や安定性の面で未知数な部分が多く、日本企業の間では「リスクが高い」と認識される傾向があります。


東南アジアの情報が日本国内で十分に共有されていない

日本のメディアは東南アジアの経済ニュースをほとんど報じておらず、日経新聞など一部のビジネスメディアに限定されています。これにより、東南アジア市場の成長や変化が日本国内のビジネスマンに伝わりにくく、結果として「興味を持つ理由が見つからない」状況が続いています。


日本企業の技術と東南アジア市場のニーズのギャップ

日本の大手企業は優れた技術を持っていますが、シンガポールや東南アジア市場の多様なニーズに1社単独で対応するのは難しいのが現状です。現地の産業構造やビジネス環境は国ごとに異なり、日本企業が提供できる技術が必ずしも市場の課題とマッチするとは限りません。そのため、東南アジアの企業側から見ても、日本企業との連携が「非効率」と判断されるケースがあります。


 

2|日本と東南アジアの文化的な違いがもたらす影響

リスク回避志向の違い

ホフステードの文化次元理論(Hofstede’s Cultural Dimensions Theory)によると、日本は「不確実性回避(Uncertainty Avoidance)」のスコアが高く、リスクを避ける傾向が強い国です。そのため、新市場への挑戦よりも、既存の枠組みの中で確実性の高い戦略を取ることが好まれます。

一方、シンガポールをはじめとする東南アジアの多くの国々は「不確実性回避」のスコアが低く、新しいビジネスモデルや市場の変化に対して柔軟に適応します。この違いが、日本企業が東南アジア市場に関心を持ちにくい要因の一つになっています。


意思決定プロセスの違い

日本の企業文化は「集団主義(Collectivism)」が強く、社内の意思決定プロセスが慎重で時間を要します。一方、シンガポールなどの東南アジア諸国は比較的個人主義的な要素もあり、意思決定のスピードが速いのが特徴です。そのため、日本企業は海外進出を決定するまでに長い時間を要し、結果として市場の変化に適応できず、ビジネスチャンスを逃すことが多くなります。



 

3|日本本社と東南アジア駐在員の間に生じるギャップ

市場環境の認識の違い

東南アジアに駐在するビジネスパーソンは、現地市場のスピード感や競争の激しさを肌で感じています。しかし、日本本社は「日本のビジネスモデルがそのまま通用する」と考えがちで、市場環境の違いを十分に理解していないことがあります。本社が慎重に意思決定を進めている間に、現地ではすでに競合が新しい技術やサービスを展開しているというケースも少なくありません。


評価基準の違い

日本の本社は「短期的な成果」や「数字の達成」を重視する傾向があります。しかし、東南アジア市場では、ローカル企業との関係構築やブランド認知に時間を要するため、短期間での成果を求めるのは現実的ではありません。また、日本本社は「技術の優位性」や「ブランドの強さ」にこだわる一方、シンガポール市場ではパートナーシップの構築やローカル適応の柔軟性が成功の鍵となります。


人材マネジメントの違い

シンガポールでは優秀な人材ほど転職が一般的であり、報酬やキャリア成長の機会を重視する傾向があります。しかし、日本企業は「終身雇用的な考え方」が根強く、「すぐに辞める社員を信用できない」と考えがちです。このギャップが、適切な人材戦略を妨げています。


 

4|ギャップを埋めるために必要な取り組み

本社と現地の意思決定のスピード調整

日本本社の意思決定スピードを上げるために、現地裁量を増やすことが重要です。具体的には、

  • 東南アジア駐在員に一定の決定権を持たせる

  • 定期的に本社と現地のミーティングを実施し、相互理解を深める

  • 東南アジア市場に適したKPIを設定し、日本市場と同じ基準を適用しない


ローカル市場の理解を深める

日本本社の経営層が東南アジア市場を直接視察し、現地ビジネスの特性を体験することが必要です。駐在員の知見を積極的に活用し、現場の情報を経営戦略に反映させることで、より実態に即した市場戦略を立てることが可能になります。


 

まとめ|日本企業が東南アジア市場で成功するために

日本企業が東南アジア市場に関心を持ちにくい背景には、国内市場の優先度の高さや、リスク回避的な文化、意思決定の遅さがあります。これらの要因が、日本の本社と現地駐在員の間のギャップを生み出し、東南アジア市場での適応を難しくしています。今後、日本市場の縮小が進む中で、東南アジア市場への積極的な進出は避けられないテーマとなるでしょう。そのためには

  • 本社と現地の意思決定プロセスを調整する

  • 市場環境に適したKPIを設定する

  • 経営層が東南アジア市場を直接視察する

といった取り組みを進めることが、日本企業がグローバル競争で勝ち残るための鍵となります。

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