シンガポール政府は「シンガポール知的財産戦略2030(SIPS2030)」と命名された10年計画を発表しており、無形資産(Intangible Assets)と知的財産(Intellectual Property)のグローバルハブとしてのシンガポールの立場に貢献することを目指しています。そして、無形資産や知財を活用することによって経済成長を促進し、イノベーションを育み、活力あるエコシステムを発展させることに焦点を当てています。
一方、日本特許庁の「特許行政年次報告書(2018年度)」によれば、日本企業において自社でも他社でも実施されていない、いわゆる遊休特許が保有特許数に占める割合は49%(2016年度)となっており、日本企業の特許活用割合は決して高いとは言えない状況にあります。同時に、海外ニーズの把握は困難であり、仮に現地ニーズを把握できたとしても日本で生まれた技術シーズの多くは、現地ニーズに合うようにカスタマイズされていないため、追加開発が必要となってしまう状況にありました。技術移転先であるシンガポール企業にとっては、限られたリソースの中で事業に有用な技術を探しており、カスタマイズに必要な追加開発の工数は最小限に抑えたい状況にあります。
そのような状況を背景に、三井化学、日清紡、Panasonic、RICOH、東洋製罐の5社は、シンガポール政府系組織 IPI*との連携を開始。そして先日、JETRO SingaporeとJ-Bridge、N9 / One&Coとも連携したイニシアティブ「JCTI Launchpad」を立ち上げ。ネットワーキングイベントも初開催しました。シンガポールのスタートアップや大手企業、政府機関が一堂に会し、日系企業の無形資産や知財をベースにした多様な技術共有が行われたことで、共創やイノベーションの新たな可能性が誕生する機会となりました。(JCTIは、「Japanese Corporates Technology Innovation」の略称です)
イベント参加者からは、「共創することで、市場投入までの時間を大幅に短縮し、さまざまな業界における革新的なプロダクト開発ができるかを知る機会となった」などのコメントがあったり、IPI担当者からは「このようなコラボレーションは、シンガポールローカル企業のイノベーションスキルを向上させ、成長と競争力を促進するために不可欠。今後も引き続き多様な日系企業とのパートナーシップを期待したい」など、各所から好評を頂き、このプログラムの可能性を強く確認しました。
今後、各社で得たリードをスピード感持って前に進め、成功だけでなく失敗事例も共有を重ね、自分ごととして継続し、各方面へのインパクトを大きくしていきます。今後の展開にご期待ください。
<JCTI Launchpad Networking Eventの模様>